登記済証や登記識別情報通知書といった不動産の権利書のほか、
実印や印鑑証明書を盗まれたり紛失したりした場合、
不動産の名義が勝手に書き換えられてしまう危険があります。
また他人の不動産を不正に売却しようとする犯罪者も、いないわけではありません。
こうした危険を防ぐために、不正登記防止申出制度があります。
この制度を利用するには、不正な登記のおそれが差し迫っているとき、
権利者本人が登記所に出向いて所定の手続きにより申請します。
やむを得ない事情があるときは、代理人でも申請できます。
申請を受け付けた登記所では、それから3か月以内に新たな登記が申請された場合、
本人に確認の通知を送ります。
そこで正当な権利者は不正な登記を防げるわけです。
ただし自動的に登記が却下されるわけではないので注意が必要です。
また3か月で期限が切れるので、その後も不正の危険が続くときは、
改めて不正登記防止申出制度の手続きをしなければなりません。
不正登記防止申出制度を利用するには、いくつかの条件があります。
印鑑や権利書が盗まれた場合には、警察に被害届を出していなければなりません。
また自分の不動産が勝手に売り出されているなど、不正な取引の情報を掴んだときは、
告訴や告発をすることが必要です。
ただし緊急の場合は上記の手続きがなくても、申出は受理されることになっています。
とはいえ実印や権利書が盗難に遭ったら、まずは捜査機関に届け出るのが第一と言えます。
盗難かどうか判らない場合でも、実印や権利書をなくしてしまったときは、
不正登記防止申出制度を利用するのが確実です。
たとえ盗まれなくても登記識別情報通知書は、
シールをはがして暗証番号を盗み見るといったことが可能です。
なお盗難や紛失の際には、登記識別情報の失効を申し出ることもできます。
失効した権利書は二度と登記には使えませんが、
本人確認により登記する手段があるので、正当な権利者であれば不都合はありません。