TOP > 相続問題の基礎知識 > 年金の貰い過ぎ分の相続について
受け取った年金の額が正当な金額より多すぎるときは、
過去に遡って返納する義務が生じます。
死亡届を故意に出さなかった場合など、明らかに悪質なケースは当然と言えますが、
うっかりミスで手続きを怠ったときでも、返還義務がなくなることはありません。
たとえば生計を共にする配偶者が障害年金の受給者になったとき、
加給年金の支給は停止されますが、
その届出を怠っていると障害年金と加給年金を二重に受給することになり、
後に発覚すれば返還を請求されます。
なお障害年金に限らず、配偶者が厚生年金や共済年金に一定期間加入していると、
加給年金は受給できないので注意が必要です。
いずれにせよ老齢年金や障害年金を貰いすぎた場合には、
日本年金機構から返還を請求されることになりますが、
この義務は本人が死亡した後は、相続人に引き継がれることになります。
年金の過払いが後から発覚することもあるため、
相続するときには注意して調べなければなりません。
相続は資産も負債も一緒に引き継ぐことですから、負債の一種である過払い年金もまた、
当然に相続人が返還しなければなりません。
どうしても返還できない場合には相続放棄という手段もありますが、
これは死亡後3か月以内に裁判所へ申し立てなければなりません。
過払いの発覚が遅れると間に合わないこともあります。
また過払い年金の原因のほとんどは受給者の手続きの遅れですが、
年金機構の事務処理のミスも決して少ないとは言えず、
このようなケースがたびたび問題になっています。
支給された年金を使い切ってしまい、返す当てがない場合には、
民法703条の解釈を根拠にして、返還しなくてよいとする見解もあります。
しかし現状では返納請求が来るため、無視しているわけにはいきません。
ともかく年金の貰いすぎが判明した場合は、返還義務を知っておかねばなりませんし、
貰いすぎかどうか不明な場合でも、相続人は十分に注意を払う必要があります。